新しいインターナショナルの必要性と
その諸原則についての決議(4者宣言) 

トロツキー/訳 水谷驍・西島栄

【解説】本稿は、8月27日から開催された左翼社会主義組織および共産主義反対派組織の国際合同会議の前日に、国際左翼反対派およびそれに近い3つの組織が集まって、新しい革命的インターナショナルの原則について明らかにした宣言書である。ドイツ社会主義労働者党はこの宣言に同意したが、その後、国際左翼反対派とは方向性を異にし、中間主義の道を突き進んだ。とはいえ、この宣言書は、第4インターナショナルの創立に向けた、複数の組織による最初の国際的な宣言として重要である。

 本稿の最初の邦訳は『トロツキー著作集 1933-34』上(柘植書房)に掲載されているが、今回アップするにあたって、『反対派ブレティン』所収のロシア語にそって点検・修正している。英語版のほうが適切な場合は、注をつけた上でその文章を補っている。

Л.Троцкий, Резолюция о необходимости нового Интернационала и его принципах, Бюллетень Оппозиции, No.36/37,Октябрь 1933.

Translated by the Trotsky Institute of Japan


 本宣言に署名した諸組織は、自らに課された巨大な歴史的責務を深く自覚して、革命的プロレタリア運動の再生をめざす国際的規模の共同事業に力を合わせて取り組むことを決定した。その活動の基礎として以下の諸原則を確認する。

 1、帝国主義的資本主義の断末魔の危機は、改良主義(社会民主主義、第2インターナショナル、国際労働組合連合の官僚)の政策にとってのいかなる余地も奪い、改良主義政策との決別と、権力獲得およびプロレタリア独裁の樹立のための革命闘争を喫緊の課題にしている。後者は、資本主義社会を社会主義社会に転化するための唯一の手段である。

 2、プロレタリア革命の課題は、その本質そのものからして国際的性格を持っている。プロレタリアートは、世界的分業と世界的協業を基礎としてのみ調和のとれた社会主義社会を建設することができる。それゆえ、本宣言の署名者は、「一国社会主義」の理論を、プロレタリア国際主義の土台そのものを掘りくずすものとして断固拒否する。

 3、同じぐらい精力的に拒否しなければならないのは、オーストリア・マルクス主義者および一般に「左翼」改良主義者と中間主義者の理論である。それは、社会主義革命の国際的性格を隠れ蓑として、自国において待機的受動性に陥り、こうして実際にプロレタリアートをファシズムの手中に引き渡している。現在の歴史的諸条件のもとで権力の獲得を回避するようなプロレタリア党は、最悪の裏切りを犯しているのである。個々の国で勝利したプロレタリアートは、その社会主義建設によって国内のプロレタリア独裁を強化しなければならないが、この社会主義建設は労働者階級が少なくともいくつかの発達した資本主義諸国で政治権力を獲得しないかぎり(1)、不可避的に不完全で矛盾に満ちたものになる。それゆえ一国で勝利した労働者階級は同時に、社会主義革命を他の諸国にまで拡大させるためにあらゆる努力を傾けなければならない。権力獲得の一国的性格と社会主義の国際的性格との矛盾は、ただ大胆な革命的行動によってしか解決することができない。

 4、10月革命の中から発生した第3インターナショナルは、帝国主義の時代における革命政策の基礎を据え、世界のプロレタリアートに対して権力をめざす革命闘争の最初の教訓を与えたが、一連の歴史的諸矛盾の犠牲となってしまった。社会民主主義の裏切り的役割と各国共産党の未成熟さおよび経験不足は、東方および西方における戦後の革命運動の崩壊をもたらした。後進的な一国内に孤立させられたプロレタリア独裁は、ますます保守的で一国主義的になっていくソヴィエト官僚の力を途方もなく強大なものにした。ソヴィエト指導部に対するコミンテルン各国支部の奴隷的依存は、それはそれで、新たに一連の重大な敗北を招き、各国共産党の理論と実践のおける官僚的堕落をもたらし、その組織を弱体させ衰退させた。それ以降、コミンテルンは、自らの歴史的課題を実現する能力を喪失しただけではなく、ますます革命運動にとっての障害物となった。

 5、ドイツにおけるファシズムの攻勢は労働者階級の諸組織を決定的な試験にかけた。社会民主主義は、かつてローザ・ルクセンブルクが与えた規定、すなわち「死臭紛々たる屍」という規定の正しさを再び確認した。労働者運動から改良主義の組織と思想と方法を洗い流すことは、資本主義に勝利するための基本条件である。

 6、ドイツの諸事件は、同じぐらいはっきりと第3インターナショナルの破綻をも暴露した。14年間もの存立、さまざまな大闘争の諸経験、ソヴィエト国家による道徳的支援、豊富な宣伝手段にもかかわらず、ドイツ共産党は、深刻な経済的・社会的・政治的危機という例外的に有利な条件のもとで、その完全な革命的破産を暴露し、こうして、多数の党員の英雄主義にもかかわらず、自らの歴史的課題を実現することができないことを証明した。

 7、世界資本主義の状況、すなわち、人民大衆を前代未聞の窮状に投げ込んでいる恐るべき恐慌、抑圧された植民地大衆の革命運動、ファシズムの世界的な脅威、人類の全文明の破滅さえもたらしかねない新しい戦争の展望――こうした状況が、プロレタリア前衛を新しい(第4)インターナショナルに結集させることを否応なしに要求している。本宣言の署名者は、マルクスとレーニンが据えた理論的・戦略的諸原則の揺るぎない土台の上にできる限りすみやかにこのインターナショナルを建設するために、すべての力を傾けることを自らの義務とする。

 8、本宣言の署名者は、実際に改良主義あるいは官僚的中間主義(スターリニズム)から革命的マルクス主義の政策へと現に発展しつつあるすべての組織・グループ・分派と積極的に協力しながらも、同時に新しいインターナショナルが改良主義あるいは中間主義とのいかなる和解も受け入れないことをきっぱりと宣言する。労働者運動の統一は必要だが、それは、改良主義的概念と革命的概念とを混同したり、スターリニストの政策に迎合したりすることによってではなく、破産した2つのインターナショナルの政策を克服することによってのみ実現されうる。新しいインターナショナルは、自らの課題にふさわしい存在になるために、蜂起、プロレタリア独裁、ソヴィエト的国家形態、等々の諸問題について、革命的原則からのいかなる逸脱も許してはならない。

 9、ソ連邦は、その階級的支柱ゆえに、その社会的土台ゆえに、その無条件に支配的な所有形態ゆえに、今日においてさえ労働者国家であり、したがってまた社会主義社会を建設するための道具である。新しいインターナショナルは、帝国主義と国内の反革命からソヴィエト国家を防衛することを最も重大な課題の一つとしてその旗に書き込むであろう。まさにソ連の革命的防衛こそが、スターリン主義的コミンテルンの破滅的影響から全世界の革命勢力を解放し新しい共産主義インターナョシナルを建設するという課題をいやおうなしにわれわれに課すのである。ソ連の革命的防衛という課題が成功しうるのは、ソヴィエト官僚から国際プロレタリア諸組織が完全に独立し、コミンテルンの誤った方法を労働者大衆の面前で倦むことなく暴露する場合のみである。

 10、国内レベルであれ国際レベルであれ、革命的プロレタリア党が健全に発展するための必要不可欠の条件は、党内民主主義である。批判の自由なしには、上から下までの役職者の選挙なしには、党機関に対する下からの統制なしには、真の革命党はありえない。

 非合法の条件下での地下活動の必要性は、不可避的に革命党の党内生活の形態を変え、広範な討論と選挙制度を制約し、場合によってはそれをまったく不可能にする。しかし新しい困難な条件と状況下にあっても、健全な党体制にとっての基本的な諸要求は完全に有効でありつづける。党の現状に関する誠実な情報提供、批判の自由、そして指導部と党内多数派との真の一致がそれである。

 改良主義的官僚制は革命的労働者の意志を抑圧し蹂躙することによって、社会民主党と労働組合を、何百万という大衆の無力な集積物に変えてしまった。スターリニスト官僚は内部民主主義を窒息させることによってコミンテルンを絞め殺してしまった(2)。新しいインターナショナルとこれに加盟する各国の諸党は、民主主義的中央集権制の基礎の上にその全党内生活を築かなければならない。

 11、本宣言の署名者は、権限を委任された代表からなる一個の常設委員会を設立し、これに次の任務を与える。

 a、新しいインターナショナルの憲章となる綱領的宣言を作成すること。

 b、現代の労働者運動について、その諸組織および諸潮流を筆頭に、批判的概説を準備すること(宣言に対する解説)。

 c、プロレタリアートの革命戦略および戦術に関するすべての基本的諸問題に関するテーゼを作成すること。

 d、全世界に対して署名諸組織を代表すること。

国際左翼反対派(ポリシュヴィキ=レーニン主義者)

ドイツ社会主義労働者党(SAP)

オランダ独立社会党(OSP)

オランダ革命的社会党(RSP)(3)

 

1933年8月26日

『反対派ブレティン』第36/37号

『トロツキー著作集 1933-34』上(柘植書房)より

  訳注

(1)『反対派ブレティン』所収のロシア語版では、「この社会主義建設は労働者階級が少なくともいくつかの発達した資本主義諸国で政治権力を獲得しないかぎり」の一文はないが、文脈上必要不可欠と思われるので、ロシア語にする際に脱漏したものと思われる。

(2)『反対派ブレティン』所収のロシア語版では、「スターリニスト官僚は内部民主主義を窒息させることによってコミンテルンを絞め殺してしまった」という一文はないが、文脈上必要不可欠と思われるので、ロシア語にする際に脱漏したものと思われる。

(3)英語版では、それぞれの組織を代表して署名した人物の名前も併記されている。


  

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