結論

 ある牛売りが、牛を屠場へ連れてきた。屠畜者がナイフをもって牛に近づいてきた。

 「みんなで隊伍を組んで、この死刑執行人を角で突き刺してやろうじゃないか!」と、1頭の牛が提案した。

 「しかし、棒を手に俺たちをここに連れてきた牛売りより、この屠畜者の方が、いったいどうして悪いのか?」と、マヌイリスキーの寄宿学校で政治教育を受けた他の牛たちが答えた。

 「いや、牛売りの方は、あとで片づけることができる」。

 「だめだ」と、原則的な牛たちは答えた――「おまえは、左から敵をかばっている。おまえ自身が、社会的屠畜者だ!」

 こうして、牛たちは隊伍を組むのを拒んだ。

「イソップ物語」より

 

「ベルサイユ講和条約からの解放を、帝国主義に抑圧されている他の国々を帝国主義のくびきから解放する問題よりも、必ず、つねに、ただちに優先させることは、小ブルジョア的民族主義であって(それはカウツキーやヒルファーディングやオットー・バウアーの一派にこそふさわしい)、革命的国際主義ではない」(レーニン『共産主義の左翼小児病』、全集第17巻、164頁(1))。

 

 民族共産主義を全面的に拒否すること、「人民革命」と「民族解放」というスローガンを、公然かつ決定的に清算することが必要である。「ベルサイユ条約反対!」ではなく、「ヨーロッパ・ソヴィエト合衆国万歳!」を。

※  ※  ※

 現代技術の最も高度な成果と国際分業にもとづいてのみ社会主義は実現可能である。

 ソ連の社会主義建設は、自足的な一国的過程ではなく、国際的革命の一構成部分である。

 ドイツとヨーロッパのプロレタリアートによる権力獲得は、ソ連の国境内での閉鎖的で自足的な社会主義社会の建設よりも、はるかに現実的で、はるかに緊急な課題である。

 最初の労働者国家ソ連を、プロレタリア独裁に対する内外の敵から献身的に防衛すること!

 しかし、ソ連の防衛は目をつぶったままでなされてはならない。ソヴィエト官僚制に対する国際プロレタリアートの統制が必要だ。そして、一国社会主義の理論のうちに一般化されているその一国改良主義とテルミドール的傾向を容赦なく暴露することが必要である。

※  ※  ※

 共産党に必要なのは何か?

 コミンテルンの最初の4つの大会における戦略の学校に復掃すること。

 大衆的労働者組織に対する最後通牒主義を放棄すること。共産党の指導を押しつけることはできない。それはただ、獲得しうるのみである。

 社会民主主義とファシズムを助けている社会ファシズム論を放棄すること。

 社会民主主義とファシズムとのあいだにある敵対関係を粘り強く利用すること。それは(a)ファシズムに対するより効果的な闘争のため、(b)社会民主党労働者を改良主義指導部に対立させるため、である。

 われわれにとって、ブルジョア支配の政治体制の変化を評価する基準となるのは、形式的な民主主義の原則ではなく、プロレタリア民主主義の死活にかかわる利益である。

 ブリューニング体制を、直接的にも間接的にも支持しないこと!

 プロレタリアートの組織を、ファシズムから大胆かつ献身的に防衛すること。

 「階級対階級!」。これの意味するところは、プロレタリアートのあらゆる組織がブルジョアジーに反対する統一戦線に参加しなければならない、ということである。

 統一戦線の実践的綱領は、大衆の面前で結ばれる組織間の協定によって決定される。どの組織も、それぞれの旗と指導部のもとにとどまる。どの組織も、行動においては統一戦線の規律を守る。

 「階級対階級!」。社会民主主義組織と改良主義的労働組合が、「鉄の戦線」の背信的なブルジョア同盟者と手を切り、共産主義組織やその他すべてのプロレタリア組織と共通の隊列に参加するよう、執拗にアジテーションを展開しなければならない。

 「階級対階級!」。プロレタリア統一戦線の最高形態としての労働者ソヴィエトを宣伝し、その組織的準備を行なうこと。

※  ※  ※

 いついかなる状況下においても、共産党の完全な組織的・政治的独立性を。

 綱領や旗を混ぜ合わせることには、いかなるものであれ反対。いかなる無原則な取引にも反対。一時的同盟者に対する批判の完全な自由。

 大統領選挙に立候補しているテールマンは、言うまでもなく、左翼反対派の候補でもある。共産主義者の公式の立候補という旗のもとに労働者を動員する闘争においては、ボリシェヴィキ=レーニン主義者は最前線に立たなければならない。

※  ※  ※

 ドイツの共産主義者が学ぶべき対象は、勝利した革命にもとづいた機構の支配を体現しているソ連共産党の現在の体制ではなく、革命を勝利に導いたかつての党体制でなければならない。

 ドイツ共産党内における機構の指令体制を清算することは、死活にかかわる問題である。

 党内民主主義への復帰は必要不可欠である。

 党員労働者は、まず何よりも党内において、戦略と戦術の問題をめぐる誠実で真剣な討論を開始するべきである。左翼反対派(ボリシェヴィキ=レーニン主義者)の声を党に届けなければならない。

 この全面的な討論をふまえて、自由に選出された臨時党大会において決定が下されなければならない。

※  ※  ※

 共産党は社会主義労働者党(SAP)に対して正しい政策をとること。それは、指導部の中途半端さに対する容赦のない(しかし良心的な、すなわち事実にもとづく)批判、党内左翼に対する、注意深く同志的で誠実な態度。そして、社会主義労働者党と実践的協定を結び、革命的一翼とより緊密な政治的関係を結ぶ用意を十分にしておくこと。

※  ※  ※

 労働組合政策の大規模な路線転換。労働組合の統一にもとづいた改良主義的指導部に対する闘争。

 企業内部で統一戦線政策を系統的に実施すること。一定の諸要求の綱領にもとづいた、改良主義的工場委員会との協定。

 物価引き下げのための闘争。賃金の切り下げに反対する闘争。この闘争を、生産に対する労働者統制のためのカンパニアの軌道に乗せること。

 統一した経済計画にもとづいたソ連との協力のためのカンパニアを。

 ドイツ・プロレタリアートの関係組織の参加のもと、ソ連の機関が大雑把な計画を作成すること。

 このような計画にもとづいて、ドイツを社会主義に移行させるためのカンパニアを展開すること。

※  ※  ※

 情勢が絶望的であるかのように言う者は、嘘をついている。悲観主義者と懐疑論者は、ペストのごとくプロレタリアートの隊列から放逐すべきである。ドイツ・プロレタリアートの内的力は無尽蔵である。この力は、自ら道を切り開いてゆくであろう。

 

  訳注

(1)邦訳『レーニン全集』第31巻、64頁。

 

目次序文1章2章3章4章5章6章7章

8章9章10章11章12章13章14章15章結論


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